(6)個人によって異なるストレス ①

人間は、この世に生まれ落ちるその時にはすでにストレスを受けています。

産道を通るにしても、帝王切開で生まれるとしても、赤ちゃんにとっては大変なストレスです。

赤ちゃんがお腹がすいて泣くのも、オムツが濡れて泣くのもストレス(刺激)を感じて泣いているのです。

「早くストレスを解消してよ!」と大声で激しく泣いて訴えるから、おっぱいをもらえたり、おむつをとりかえてもらえるわけです。

このように生きていることそのものがストレスといってもよいくらいなのですね。

すべての出来事や環境が、人間にとってはストレスです。

そのストレスが「悪いストレス」となったときが問題になります。

第10号で「悪いストレス」を
「心身に悪影響を及ぼす過剰なストレス」と言いました。
そして人によってストレスの感じ方は異なり、

「好き・嫌い」「快・不快」がストレスの良し悪しに影響すると言いました。

なぜ、人によってストレスの感じ方が異なるか

適度なストレスは成長のきっかけとなったり、生きがいとなったり、人生に活力も与えます。

同じストレスであっても、ある人にとっては強いストレスとなり、別の人にとってはそれほど強いストレスとなりません。

同じストレスでもその感じ方は個人によって大きく異なるのです。

そこに「好き・嫌い」「快・不快」が影響しているのですが、その背景に次のようなことがあるといわれています。

  • 性格の傾向
  • 行動の傾向
  • ものの見方・考え方の傾向(信念・価値観・人生観など)
  • ストレスに対処するやり方
  • 周囲の人たちの支えの有無
  • 生い立ち

ではなぜ、これらがストレスの感じ方に影響するのでしょう。

ストレスが「悪いストレス」になるとき

たとえば次のようなことが起きた時、多くの人は負の感情にさらされるため「不快」の状態となり、ストレスを感じます。

① ストレスを避けられないとき

自分の意思でストレスを避けることができない時、「悪いストレス」となる可能性があります。

たとえば、大切な人の死、パワハラ、災害、騒音、電車遅延での遅刻、電車の中で見たくないもの・聞きたくないものに曝される、病気や障害を負うなどです。

これらの出来事は、人によって受け止め方が異なり、受けるストレスの強度に違いが出ます。

大切な人との別れの場合、その人との体験や関係性、どのように亡くなったかは重要です。

何年たってもその人への思いが日常生活に支障をきたしているようなとき、心身にも悪影響をおよぼしていることは少なくありません。

② 予測不能のとき

予測できたことは、できなかったことに比べてストレスは低くなります。

たとえば、予定が変更されるかもしれないと思っている時の予定変更には心の準備ができていますから、対処しやすいのですが、

突然の予定変更となると、まず驚きや困惑から始まり、対処するまでに時間がかかります。

また、予定の変更で過去に大変な思いをしたことのある人とない人とでは、怒りや絶望感、無力感などの強度が違います。

たとえば渋滞で車が動かなくなった時、キレて怒鳴り散らす人がいますが、過去に相当大変な思いをしていることは少なくありません。

③ 自分の期待していることと異なるとき

物事が自分の思い通りに進んでいるとき、ストレスにはなりません。

相手が、自分の期待通りのことをしてくれれば、ストレスはあまり感じないのです。

「××であるべき」「××でなければ」という気持ちが強い人の場合、自分の思い通りに周囲が動いてくれないため、感じるストレスは強くなります。

その結果、イライラが多くなるわけです。

そうなると周囲の人の方もストレスを強く感じることになります。

逆に、他人に自分の期待を押しつけない場合、相手に対するストレスは低くなります。

④ なかなか決断できないとき

心の中の葛藤は、誰にとってもストレスになります。

たとえば飲み会に誘われたとき、「飲み会に行きたくないけど、行かなければ嫌われるのではないか」と思う人は葛藤しますので、ストレスがかかります。

しかし、嫌われるなどと考えず「行きたくないから、行かない」人には葛藤はありませんのでストレスになりません。

次回は、①のストレスを感じやすい「性格の傾向」について考えたいと思います。

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