前回、夢は「心の傷」を巡り、「心を癒やす」というお話をしました。
今回は、なぜ夢が「心の傷」を巡るのかについて考えてみたいと思います。
「こころ」
人類は、ずーっと「こころ」について考えてきました。
でも、いまだによくわかっていません。
「こころ」は目に見えないし、数値化もできないからです。
そのため「科学」として研究対象になりにくいのです。
それでも私たちが「こころ」を感じていることは事実です。
では私たちは、どこで「こころ」を感じているのでしょう。
以前に、「感情は身体反応」というお話をしたことがあります。
自然発生的に湧いてくる感情は、身体反応なのです。
たとえば、
恐怖を覚えたとき、「身体が」恐怖の状態にあります。
この「恐怖状態の身体」を「恐怖」として感じているのが「こころ」です。
「言葉」で表現すると、「怖い」となります。
ところで「怖いもの」は、他にもあります。
ライオンも怖いし、地震も怖いし、今だったらコロナでしょうか。
つまり、
「怖い」という「言葉」は、様々な「怖いイメージ」に使われているのです。
逆に言うと、
身体が「恐怖状態」になって、「怖い」と感じると、その「言葉」によって様々な「怖いイメージ」が呼び起こされるということになります。
「言葉」と「イメージ」は、「身体」を通して連動しているわけです。
「言葉」と「イメージ」
ところで、体には、
免疫という自己治癒力があって、ウィルスが入ると戦ってくれますね。
「心の傷」の場合は、
無意識の中にある「心の自己治癒力」がはたらきます。
解決したい問題がある時は、「心の自己解決力」がはたらきます。
問題が起きると、
人は誰でも一生懸命、その問題について「言葉」を使って考えますね。
「考えても分からない」、「解決策がない」と言いながら、
その問題について、ずっと考えています。
すると、
無意識の中では、その問題に関連する「イメージ」が活性化するのです。
先に言ったように「言葉」と「イメージ」は連動して動くからです。
考えても、考えても、解決できなくても、考え続けた末、科学的大発見をした例は少なくありません。
ドイツの化学者・ケクレがベンゼンの構造式を夢で発見したのは有名な話です。
これが無意識の「自己解決力」です。
「創造力」でもあります。
無意識の中には、忘れてしまった知識も体験も残っていて、
遺伝子の中には、人類の知恵も含まれています。
それらのイメージを総動員して、「悩み」を解決しようとするのです。
夢は「心の悩み」を巡る
一生懸命解決しようとしてもなかなかうまくいかないとき、夢のイメージは、「心の悩み」を巡り、総合的に客観的に、解決しようとします。
夢の中で、「言葉」と「イメージ」が混ざり合って、次にまた新しいイメージが生まれます。
それを繰り返していくと、問題は解決に向かっていくのです。
ユングはそれを体験から知りました。
とはいっても、ユングが初めてではありません。
夢による解決法(夢のお告げ等)は、古代から世界中で行われていました。
夢が重視されなくなったのは、ほんの100年くらい前のことです。
それまでは、私たちは日常的に夢に関心をもっていました。
本当に困ったとき、追い詰められたとき、人は自然に夢を語りだすようです。
第二次世界大戦下のドイツ、アウシュビッツ(ユダヤ人の強制収容所があった場所)では、毎朝夢を語り合ったといいます。
夢を信頼し、皆で夢を共有するとき、
人間性を取り戻したり、希望を持てたと、生存者が語っています。
古代の人たちも、そういう夢の力を知っていたのでしょう。
だからこそ、時代も民族も越えて全人類がごく最近まで夢を重視してきたのだと思います。
この夢の力を利用するためには、夢を記録したり、夢を他者に語ったりして、夢に関心を持つことが大事です。
取手心理相談室
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