(20) 「夢」の生成 ③イメージと言語(1)はじめに

これまでは、「夢の生成」について、「夢の素材」からみてきました。

今回から、「夢の素材」がどのように変化したり組み合わさっていくのかについて考えてみたいと思います。

夢は展開する

現代人の多くは、夢を見ても忘れてしまいます。
でも、夢に興味を持つと、覚えていることが多くなります。

そして、夢分析を始めてみると、
夢は、いくつかのテーマを持って、シリーズで展開していくのに気づきます。

テーマは、人によって違います。

たとえば最初の夢に「森の中のぬかるんだ道」が出てきたとき、
夢では、たびたび「泥」が出てきたりします。

たとえば、最初は「森の中のぬかるんだ道」として出てきたとします。
それが、だんだんと姿を変えていき、「陶器」が夢に出てきたとします。

「森の中のぬかるんだ道」
  ↓
「ぬかるんだ車道」
  ↓
「泥んこ道」
  ↓
「粘土」
  ↓
「陶器の破片」
  ↓
「陶器」

上の例では、
「ぬかるみ」から「陶器」へと、夢の中では創造的な動きが起きています。

「ぬかるみ」は「泥」へ、そして「粘土」へと変容していきました。

夢分析をすると、なぜこのような変容が起きるのでしょう。

無意識の中で、何かが起きているのです。

無意識の中で起きていること

無意識の中の「ことば」について、以前、次のように言いました。

無意識的な体験は「ことば」にした瞬間に「意識」されます。
もし無意識の中に「ことば」があるとすると、メタファー(比喩)にあふれた詩的なことばです。

「ことば」は、ほとんど「イメージ」で理解します。
「ことば」と「イメージ」は、離れがたいのです。

たとえば、ヘレン・ケラーのエピソードを思い出してみましょう。

目も見えず、耳も聞こえず、話もできないヘレンが「ことば」というものを知ったとき、ヘレンは、すでに7歳になっていました。
いくつかのことばは覚えたものの、「コップ」と「ミルク」の違いが分からなくて苦戦していました。

そのとき、サリバン先生とヘレンの有名な場面で、ヘレンは「水」という言葉を覚えるのです。
まさにこのとき、ヘレンは、あらゆるものに名前があることを知ったのです。

ここからは、怒涛のようにことばを覚えていきました。
きっかけは、
手に勢いよくかかる冷たい水の感覚と「水」ということばがぴったりあったときです。

「水の感覚」の「イメージ」と、「み・ず」という「音(発音)」が結びついたとき、はじめて、「み・ず」という発音が、「水」を表わすことばとして使えるようになりました。

こうして、「水」は、「水のイメージ」を伴った「ことば」となるのです。

イメージと言語

つまり、私たちがことばを使うとき、
ことばの持っているイメージが一緒にこころに動いているのです。

話をしたり、考え事をしていると、
無意識ではイメージが活発に動き、そのイメージには「ことば」がくっついているというわけです。

意識的に使う「ことば」と、無意識で動く「イメージ」は密接につながっていて、お互いに影響を与えていることになります。

次回から、「イメージとことば」が無意識の中でどんな動きをするのか見ていきたいと思います。

その動きが、科学や芸術の創造力や、私たちの中の自己解決力や自己治癒力を生み出していくのだと思います。

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