(12) 「夢」の生成 ①意識と無意識 (4)

「意識と無意識」のこれまでのまとめ

「意識」が17世紀に発見され、18世紀になって「無意識」が発見されました。

「無意識」が発見されたのは、「心の病気」の原因が「無意識」の中にあることが分かったからでした。

「無意識」の中にある「病気の原因」を探る方法は、「おしゃべり療法」と呼ばれました。

ちなみに、この「おしゃべり療法」が心理療法(カウンセリング)の始まりです。

「おしゃべり療法」を始めたのは、フロイトという人ですが、フロイトは「夢分析」も心の治療に使用しました。

ユングも夢分析をしましたが、フロイトとは異なる方法でした。

それは、ユングとフロイトの「無意識」に対する考え方が違うからです。

前回は、ユングの考える「意識」と「無意識」についてお話しました。

「意識」は言葉と深い関係がありますが、「無意識」には言葉がないと言いました。

さらに「無意識」の特徴を次のように言いました。

「時間も空間もない。モノゴトを並べることなく、分類することなく、原因や結果を考えず、時間も空間も無視して、一瞬で、直観的に、全体をつかむ(把握する)」。

なんだかよく分からないですね。

ぜんぜん、科学的ではありませんね。

「無意識」は、科学的ではない

「こころ」は、科学的ではないのです。

私たちは、「地球は太陽の周りをまわっている」ことが科学的に正しいと分っていても、「心の体験」は違います。

太陽は東から昇って西に沈むのです。

太陽の方が動いているのであって、大地(地球)は動きません。

私たちは、大地(地球)と太陽をこのように体験しています。

私たちの「体験」は、ぜんぜん「科学的」ではないのです。

「無意識」も同じです。

「無意識」は、「心の体験」だからです。

今回は、「無意識」の様子についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

「無意識」の様子

無意識の動きが、日常にはどのように体験されるかを例にして説明します。

(1) 時間も空間もない

「無意識」の世界には時間も空間もありません。

夢の中でも、私たちは時間と空間を自由に行き来していますね。

日常をみると、「辛い過去」を思い出すとき、「今・現在」辛いわけです。

過去を思い出して流す涙は、過去ではなく、今・現在の涙です。

「過去」は「現在」なのです。

(2) モノゴトを並べないし、分類もしない

たとえば言葉ですと、言葉が意味をなさなくなる状態です。

いろいろな単語がごちゃごちゃになっていて、意味の繋がりがない状態です。

「無意識」の中は、このようになっていると考えられます。 

(3) 直観的に全体を把握する

モーツアルトが作曲する時、曲の全部がすでに頭の中にあって、それを書き写すだけだったといいます。

最初から無意識の中に全曲があったのです。

寝ている時や、リラックスしている時に、アイデアが生まれていることはよく知られていますね(ケクレのベンゼン構造式の発見等)。

原因や結果と関係なく、一瞬で全体のイメージが生じる状態です。

この他にも、「無意識」の特徴にはいろいろあります。

(4) 始まりは終りであり、終りは始まりである

何かを始める時、私たちは「終わり」を考えています。
そして、何かが終わったということは、次の何かの始まりでもありますね。

(5) 全体は部分であり、部分は全体である

ひとつひとつの「部分」には、全体が組み込まれています。

ある人の一部分を見て「この人はこういう人」と判断することがあります。

部分が全体をあらわすということですね。

逆もあります。

その人らしさという全体は、その人のいろいろな部分にもゆきわたっています。

全体は部分でもあるということです。

(6) 否定することは、肯定すること

たとえば、「(ある人が)いない」のだけど「いる」という状態がこれです。

「いない」けど、「いる」とは、どういうことでしょう。

目の前には「いない」のですが、どこかには「いる」のです。

でも赤ちゃんの場合は、目の前にいないと本当に「いない」と思ってしまいます。

だから、ママの姿が見えなくなると、この世の終わりのように泣くわけです。

その赤ちゃんが成長して、目の前にはママは「いない」けど、どこかに必ず「いる」と思うことができた時、ママから離れて遊ぶことができるようになります。

このとき、「ママはいないけど、ママはいる」わけです。

「無意識」については、今回はこのくらいにしておこうと思います

どうでしょうか?

「無意識」は私たちの「こころ」の動きであることが少し伝わったでしょうか?

頭で理解したこと(「意識」)や、科学的な事実とは違って、「無意識」は「心が感じたこと」なのです。

だから、無意識の手掛かりとなる「夢」が大事になってくるのです。

続く

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