「意識と無意識」のこれまでのまとめ
「意識」が17世紀に発見され、18世紀になって「無意識」が発見されました。
「無意識」が発見されたのは、「心の病気」の原因が「無意識」の中にあることが分かったからでした。
「無意識」の中にある「病気の原因」を探る方法は、「おしゃべり療法」と呼ばれました。
ちなみに、この「おしゃべり療法」が心理療法(カウンセリング)の始まりです。
「おしゃべり療法」を始めたのは、フロイトという人ですが、フロイトは「夢分析」も心の治療に使用しました。
ユングも夢分析をしましたが、フロイトとは異なる方法でした。
それは、ユングとフロイトの「無意識」に対する考え方が違うからです。
前回は、ユングの考える「意識」と「無意識」についてお話しました。
「意識」は言葉と深い関係がありますが、「無意識」には言葉がないと言いました。
さらに「無意識」の特徴を次のように言いました。
「時間も空間もない。モノゴトを並べることなく、分類することなく、原因や結果を考えず、時間も空間も無視して、一瞬で、直観的に、全体をつかむ(把握する)」。
なんだかよく分からないですね。
ぜんぜん、科学的ではありませんね。
「無意識」は、科学的ではない
「こころ」は、科学的ではないのです。
私たちは、「地球は太陽の周りをまわっている」ことが科学的に正しいと分っていても、「心の体験」は違います。
太陽は東から昇って西に沈むのです。
太陽の方が動いているのであって、大地(地球)は動きません。
私たちは、大地(地球)と太陽をこのように体験しています。
私たちの「体験」は、ぜんぜん「科学的」ではないのです。
「無意識」も同じです。
「無意識」は、「心の体験」だからです。
今回は、「無意識」の様子についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。
「無意識」の様子
無意識の動きが、日常にはどのように体験されるかを例にして説明します。
(1) 時間も空間もない
「無意識」の世界には時間も空間もありません。
夢の中でも、私たちは時間と空間を自由に行き来していますね。
日常をみると、「辛い過去」を思い出すとき、「今・現在」辛いわけです。
過去を思い出して流す涙は、過去ではなく、今・現在の涙です。
「過去」は「現在」なのです。
(2) モノゴトを並べないし、分類もしない
たとえば言葉ですと、言葉が意味をなさなくなる状態です。
いろいろな単語がごちゃごちゃになっていて、意味の繋がりがない状態です。
「無意識」の中は、このようになっていると考えられます。
(3) 直観的に全体を把握する
モーツアルトが作曲する時、曲の全部がすでに頭の中にあって、それを書き写すだけだったといいます。
最初から無意識の中に全曲があったのです。
寝ている時や、リラックスしている時に、アイデアが生まれていることはよく知られていますね(ケクレのベンゼン構造式の発見等)。
原因や結果と関係なく、一瞬で全体のイメージが生じる状態です。
この他にも、「無意識」の特徴にはいろいろあります。
(4) 始まりは終りであり、終りは始まりである
何かを始める時、私たちは「終わり」を考えています。
そして、何かが終わったということは、次の何かの始まりでもありますね。
(5) 全体は部分であり、部分は全体である
ひとつひとつの「部分」には、全体が組み込まれています。
ある人の一部分を見て「この人はこういう人」と判断することがあります。
部分が全体をあらわすということですね。
逆もあります。
その人らしさという全体は、その人のいろいろな部分にもゆきわたっています。
全体は部分でもあるということです。
(6) 否定することは、肯定すること
たとえば、「(ある人が)いない」のだけど「いる」という状態がこれです。
「いない」けど、「いる」とは、どういうことでしょう。
目の前には「いない」のですが、どこかには「いる」のです。
でも赤ちゃんの場合は、目の前にいないと本当に「いない」と思ってしまいます。
だから、ママの姿が見えなくなると、この世の終わりのように泣くわけです。
その赤ちゃんが成長して、目の前にはママは「いない」けど、どこかに必ず「いる」と思うことができた時、ママから離れて遊ぶことができるようになります。
このとき、「ママはいないけど、ママはいる」わけです。
「無意識」については、今回はこのくらいにしておこうと思います
どうでしょうか?
「無意識」は私たちの「こころ」の動きであることが少し伝わったでしょうか?
頭で理解したこと(「意識」)や、科学的な事実とは違って、「無意識」は「心が感じたこと」なのです。
だから、無意識の手掛かりとなる「夢」が大事になってくるのです。
続く
取手心理相談室
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