ストレスは悪か?
前回、ストレスは心身の病気の引き金になるというお話をしました。
ストレス状態が続き、心身の緊張が続くことは心にも体にも負担になります。
しかし、ストレスがなければよいかというと、そうでもないのです。
「ストレスから自由になりたい」
「ストレスさえなければ」
このように思ったことのない人はいないでしょう。
しかし、心身に全くストレスのない環境で過ごすという、有名な実験があります。
ネズミの実験と人間の実験を紹介します。
野生のネズミと飼育のネズミ
ストレスの多い野生ネズミと、快適な環境の飼育ネズミの比較です。
野生ネズミは、気温の変化や外敵の脅威などのストレッサーにさらされています。
実験の結果、臓器の大きさが違ってくることが分かりました。
特に野生ネズミの副腎の大きさは、飼育ネズミの2~3倍でした。
副腎髄質から分泌される物質に、「ストレスに立ち向かうホルモン」があります。
飼育ネズミはストレスに対応する必要がなくなって、副腎が退化し、このホルモンの分泌が減ったと考えられます。
その結果、飼育ネズミのストレス対応能力は減退しました。
逆に野生ネズミは、ストレスに対して心身を「きたえる」機会を与えられ、結果的にたくましくなったと考えられています。
まったくストレスのない環境で人間は?
心にも体にもストレス(刺激)がない環境にいると人はどうなるのでしょう。
感覚遮断実験という有名な実験があります。
温度は一定で暑くも寒くもなく、静かな環境で、快適なベッドに横たわったまま過ごします。
多額の報酬を受ける約束をして、できるだけ長い時間過ごす実験です。
ほとんどの人が、2,3日で我慢ができなくなりました。
幻視や幻聴などの異常体験があらわれて、「報酬はいらないから早く出して」という人までいました。
そのほかに、次のような症状が出ました。
●室温が変化しても、体温を調節することができない。
●周囲への警戒感がなくなり、非常に暗示にかかりやすくなった。
室温の変化という刺激(ストレス)に対応する能力が低下したり、暗示にかかりやすく、指示されると犯罪さえも犯す状態になりました。
慢性的な強いストレスは心身に悪影響を与えることは事実です。
そのため(追加)悪者扱いされる「ストレス」ですが、
まったくないと、こころもからだも、環境に適応する能力が弱まってしまい、
快適に生きていくことができなくなるようです。
人間には「適度なストレス」が必要なのですね。
取手心理相談室
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