(2)ストレスは悪か?

ストレスは悪か?

前回、ストレスは心身の病気の引き金になるというお話をしました。

ストレス状態が続き、心身の緊張が続くことは心にも体にも負担になります。

しかし、ストレスがなければよいかというと、そうでもないのです。

「ストレスから自由になりたい」

「ストレスさえなければ」

このように思ったことのない人はいないでしょう。

しかし、心身に全くストレスのない環境で過ごすという、有名な実験があります。

ネズミの実験と人間の実験を紹介します。

野生のネズミと飼育のネズミ

ストレスの多い野生ネズミと、快適な環境の飼育ネズミの比較です。

野生ネズミは、気温の変化や外敵の脅威などのストレッサーにさらされています。

実験の結果、臓器の大きさが違ってくることが分かりました。

特に野生ネズミの副腎の大きさは、飼育ネズミの2~3倍でした。

副腎髄質から分泌される物質に、「ストレスに立ち向かうホルモン」があります。

飼育ネズミはストレスに対応する必要がなくなって、副腎が退化し、このホルモンの分泌が減ったと考えられます。

その結果、飼育ネズミのストレス対応能力は減退しました。

逆に野生ネズミは、ストレスに対して心身を「きたえる」機会を与えられ、結果的にたくましくなったと考えられています。

まったくストレスのない環境で人間は?

心にも体にもストレス(刺激)がない環境にいると人はどうなるのでしょう。

感覚遮断実験という有名な実験があります。

温度は一定で暑くも寒くもなく、静かな環境で、快適なベッドに横たわったまま過ごします。
多額の報酬を受ける約束をして、できるだけ長い時間過ごす実験です。

ほとんどの人が、2,3日で我慢ができなくなりました。
幻視や幻聴などの異常体験があらわれて、「報酬はいらないから早く出して」という人までいました。

そのほかに、次のような症状が出ました。

●室温が変化しても、体温を調節することができない。
●周囲への警戒感がなくなり、非常に暗示にかかりやすくなった。

室温の変化という刺激(ストレス)に対応する能力が低下したり、暗示にかかりやすく、指示されると犯罪さえも犯す状態になりました。

慢性的な強いストレスは心身に悪影響を与えることは事実です。

そのため(追加)悪者扱いされる「ストレス」ですが、

まったくないと、こころもからだも、環境に適応する能力が弱まってしまい、

快適に生きていくことができなくなるようです。

人間には「適度なストレス」が必要なのですね。

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