うつ病の方へのご家族の対応

次のようなことはありますか?

● 何もしないでゴロゴロしてるのを見るとイライラする。

●  好きなことはするのに、やりたくないことはしないので腹が立つ。

●  わがままじゃないかと思う。

●  甘えているようにしか見えない。

●  いろいろ目につき、つい口を出してしまう。

●  注意すると泣いたり、怒ったりする。

●  腫れ物に触るような扱いになってる。

●  「死にたい」に対して、なんと言ったらいいのか分からない。

●  コロコロと気がかわり、こちらが疲れる。

●  家族のほうがつぶれてしまいそう。

家族も必死

家族の誰かたうつ病になったとき、他の家族は「なんとかしないと」と必死になります。

● 早く治してげなくては

● 早く元のように元気になってほしい

● いつもの笑顔が見たい

そして、何か良い方法はないかと、一生懸命調べて、なんでもやってみようと思います。

それなのに、うつ病という病気は、なかなか良くならないことが多いのです。

必死になればなるほど、空回りしている感じになることも少なくありません。

病院へ行けば、お薬がもらえます。

でも、この薬は、いつまで飲み続けるのか。

薬を飲まなくてもよくなることはあるのか。

まさか、一生飲み続けるんじゃないだろうか。

その不安は、うつ病の患者さんと同じくらいに深くなるほどです。

万策つきたと思ったとき、今度は自分がうつ的になっていることも珍しくありません。

一体、どうしたらよいのでしょう?

以下は、うつ病の方へ対応の仕方として、一般的に勧められている方法です。

ただ、頭ではわかっても、行動することは非常に難しいのが普通です。

うつ病の方への対応の仕方

以下の対応は、「できなくて当たり前」と思ってください。

● よく話を聞いてあげる。

● 決して否定しないで聞く。

● 安心して寝ていられる環境を整える。

● 気分転換(外出、旅行、娯楽等)を勧めない。

● 励まさない(すでに十分努力しています)。

● 「良くなったね」と言わない。

● 説教やアドバイスをしない。

● 「できないこと」「できること」に干渉しない。

● たとえゴロゴロしたり、一日ゲームをしたりしていても、今の状態をそもまま受け入れる。

● 「やりたいこと」だけをして、「やりたくないこと」はしなくていいことを保証してあげる。

● 「いつも心配していること」「あなたは大切な存在であること」を常に伝え続ける。

いかがでしょうか。

「できそう」に見えても、実際に行うことは非常にむずかしいことばかりです。

しかし、これらのことができれば、うつ病の方は、必ず良くなっていくものです。

なぜなら、

うつ病の方にとって、関係性が非常に重要だからです。

まわりの方が適切な対応を身につけ、関係性が変化すれば、必ず良くなっていくのです。

ところが、「適切な対応」は、相当の余裕がないとできません。

ご家族が心の余裕を持つことが大事

ご家族が余裕をもち、こころが安定していると、患者さん自身が安心し、安定してきます。

ご家族がうつ病になり、精神的に追い詰められ、心に傷を抱えているままでは、なかなか余裕をもつことができませんね。

特にうつ病が長引いている場合、看病している方も疲弊してしまいますから、適切な対応ができなくて当たり前なのです。

ですからうつ病の改善には、一緒に暮らすご家族の心のケアは非常に重要なのです。

具体的な対応の例

繰り返しますが、

以下は理解はできても、行動することは難しい対応です。
できないのが当たり前と思って、参考にするだけでいいと思います。

    (1) 「消えてしまいたい」・「死にたい」に対して

① 第一段階

「死にたい」気持ちをしっかりと聞いて、受け止めてあげてください。
すると、行動には移さなくなります。

「死にたい」人にとって必要なのは、「気持ちを聞いてくれる人」「気持ちを受け止めてくれる人」です。

「死にたい」気持ちを、とことん聞いてあげましょう。

「どうして死にたいの?」
「どうやって死にたいの?」
「いつから死にたいと思っていたの?」
「どんなとき死にたくなるの?」

できるだけ、具体的に聞いてみましょう。

死んでほしくない私たちは、どうしても、「死にたいなんて言わないで」とか、「なに、バカなこと言ってるの」などと言いたくなります。

しかしそのように言うと、せっかく「死にたい」と言っているのに、それを否定することになり、ますます死にたくさせてしまいます。

② 第二段階

第一段階が充分できてから、第二段階に進みます。
第一段階が充分でないと、何も伝わりませんので。

第二段階では、本人が「私は生きていていい」と思えるような言葉を伝えましょう。

「あなたに死んでほしくない」
「あなたは私にとって大切」
などを伝えます。

手を握ったり、抱きしめたりしてもよいと思います。

「死なない約束」も助けになることがあります。

    (2) 「やる気が出ない」に対して

「頑張って」とは言わないようにしましょう。

なぜならうつ病の方は、既に十分頑張っているからです。
たとえそのように見えなくても、です。

「頑張って」と言われると「これ以上どうやって頑張るのか」と感じさせてしまいます。

そして、頑張れない自分を責めたり、自信をなくしたり、その結果、死にたくなったりします。

「気分転換に〇〇しましょう」は、状態が悪い期間は言わないほうががいいでしょう。

うつ病の方は、気分転換もできなくて苦しんでいるからです。

たとえば「気分転換に出かけましょう」と言われると、断れないために無理をして出かける方が多いのです。

すると症状は悪化します。

悪化してしまうと、悪化した自分を責めてしまい、悪循環に入ります。

このように、「うつ病の方のため」に声をかけることが逆に、うつ病の方を苦しくさせてしまうことがあるのです。

まわりの人が「やってあげたいこと」「やってほしいこと」は、あくまでも本人の希望ではなく、「まわりの人の希望」ですので、本人は困ることが多いのです。

まず第一に、本人が「どうしたいか」「どうしてほしいか」を大切にしてあげましょう。

    (3) ゴロゴロしているのを見てイライラするとき

うつ病は、こころのエネルギーが枯渇して、日常生活にまで必要なエネルギーがまわらない状態です。

つまり、休息することでエネルギーをためようとしているのです。

本人は、決して休みたい、ゴロゴロしたい、なまけたいと思っているわけではないのです。

からだが、休むことを求めているので、「動きたくても、動けない」のです。

しかし本人はまじめですから「動きたい」ために、動けない自分を責めてしまいます。

そこを理解することができれば、イライラは減るはずです。

理解できたら、「安心して休んでいい」と声をかえてあげましょう。

うつ病の方は、こころが弱いわけでも、甘えているわけでもありません。 
怠けているわけでもないし、ゴロゴロしたくて動かないのでもありません。

しかし、たとえこれが理解できたとしても、毎日のことですからご家族にとっては大変です。

それにうつ病の方はイライラしていたり、攻撃的になることも少なくありません。

一緒にいると腹が立つし、疲れも溜まり、余裕がなくなっていきます。

もし、サポート必要と思われたときは、カウンセリングをご利用ください。

ご家族がカウンセリングを受けることで、余裕を持って接することが可能になり、さらに、適切な対応もできるようになっていきます。

うつ病の改善のために、ご家族のカウンセリングは必ず役に立ちます。

カウンセリングには、いろいろなやり方があります。
「話を聞いてくれるカウンセリング」をお勧めします。

取手心理相談室
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