前回は、「意識の発見」と「無意識の発見」についてお話しました。
「夢」は、この「意識」と「無意識」の相互作用によって生成されるのです。
でも、私たちにとって「無意識」は、全くわからないものです。
この無意識は、18世紀後半から徐々にその存在が疑われ始めていたのですが、その存在を証明して世界に知らしめたのがフロイトでした。
では、どのように証明したのでしょう。
「心が原因でおきる病気」の治療
当時(18世紀ころから)流行っていた病気がありました。
身体には何の異常もないのに、目が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、歩けなかったり、身体のどこかに頑固な痛みがあったり、倒れたりするのです。
とても不思議ですね。
このような病気は、当時は「ヒステリー」と呼ばれていました。
この病気は、その後「神経症」と呼ばれるようになり、
現在は、「身体表現性障害」とか、「解離性障害」という名前になっています。
「ヒステリー」の症状は、「暗示」で消したり、逆に「暗示」で症状をつくったりできることが、だんだんわかってきました。
ほら、あの催眠術を思い出してみてください。
「3つ数えたら、あなたの足はマヒして歩けなくなります」と催眠をかけられるとどうでしょう?
どんなに頑張っても、歩くことができません。
今度は、足がマヒしてしまった「ヒステリー」の患者さんに、「3つ数えたら、あなたは椅子から立ち上がって、歩き始めます」と言ってみます。
すると、どうでしょう。
患者さんが歩きだすのです。
こうやって病気は治すことができたのです。
この「ヒステリー」という病気を、フロイトは、催眠術を使わないで治しました。
「おしゃべり療法」と呼ばれています。
この方法では患者さんは、なんでも思いつくことを思いつくままに自由に話すことが大事でした。
「おしゃべり」していくと、患者さんは今まで忘れていたことを思い出していきました。
すると、症状はなくなっていくのです。
忘れていたこと(無意識の中に隠していたこと)を思い出すと、劇的に症状が消えるわけです。
この事実を確認したフロイトは、「ヒステリーの要因は無意識の中にある」と言ったのです。
このとき、「無意識の存在」が世界に発信されたわけです。
前置きが長くなりましたが、いよいよ「夢」です。
「夢は無意識への王道」(フロイト)
フロイトは「夢」について、無意識へ至る王道だと言いました。
しかし夢は一見、無意味で理解しがたいものです。
それは、「無意識に隠してあるもの」を偽装しているからだ、というのがフロイトの意見です。
フロイトは、「夢」を分析して偽装を明らかにすると「隠されているもの」が分かると考えました。
このとき、
「夢」を使った治療が「復活」しました。
1900年のことでした。
17世紀にデカルトによって「見えないものの排除」が行われてからですから、久方ぶりの現役復帰ですね。
しかし、デカルト以前の「夢」は、「夢を見ること」そのものが治療として重視されていたり、神の言葉と捉えられていました。
フロイトの「夢」は、それとは違います。
フロイトの「夢」は偽装しているわけですから。
「夢」に対するフロイトの考えに真っ向から反対した人がいます。
ユングです(当相談室はユングの考え方です)。
ユングの考える「夢」
ユングは、「夢は決して嘘をつかない」と言いました。
「夢は容赦のない真実だ」とも言いました。
夢を見た人の状態や考え方がそのまま表れていると考えました。
そして夢は、心の成熟や発達についての知識を意識に与えると考えました。
「夢」そのものが「癒し」になるとも考えました。
ユングがこのように考えるのは、フロイトと「無意識」の考え方が違うからです。
「意識」も「無意識」も、現実の体験
人びとがあまり気にしていないことですが、
私たちの人生の半分近くは、無意識の状態で過ごします。
寝ている間はもちろん無意識状態ですし、「無意識で」言ったり、行動したりしていることは多いのです。
「夢の世界」は、意識と同じくらいリアルです。
「夢」で走ると、実際に心臓がどきどきしたり、足が疲れたりします。
「夢の世界」にいるときは、現実の世界と同じ体験を体はしているのです。
ある一つの体験は、「意識がとらえた体験」と「無意識がとらえた体験」の両方合わせて、一つの体験となります。
つまり人は、「意識の世界」と「無意識の世界」の両方に生きていているのです。
しかし、心は「意識していること」しか、意識できません。
大切な、もう一つの体験は、なかったことになっています。
その「もう一つの体験」を、「夢」は教えてくれるのです。
このようにユングは考えました。
(11)へ続く
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