(5) 「あなたって○○ですよね」

「あなたって〇〇ですよね」

こんなふうに言われてムカッとしたことがありますか?

「あなたは何も心配事なんてないでしょ」

「あなたって幸せそうね」

「あなたはいつも元気ね」

「あなたって、傷つきやすいよね」

「あなたって、すぐ泣くよね」

「あなた、けっこう、細かいよね」

「すぐ怒るよね」

いかがですか?

こういわれて「ムカッ」ときたこと、ありますか?

これが喧嘩の場面だと、強い非難の言葉になります。

「あなたって、自分のことしか考えないよね!!」

「あなたって、いつもいい加減なんだから!!」

「一度も時間に来たことないじゃない!」


「ムカッ」とくるときに思うこと


★「そんなことないのに、なんでそう思うの?」

★「私のことなんて何も知らないくせに」

★「勝手に決めないでほしい」

★「失礼ね」

★「分かってない。理解する気もないんだ」

★「誤解してる」

★「お前が決めるな」

たとえば「あなたはいつも元気ね」について考えてみましょう。

こう言われて、「そうなんですよ」と思う人は「ムカッ」ときませんね。

「ムカッ」とくる人の多くは、「本当は他人が思うほど元気じゃない」と思っている人です。

当たってないから、「決めつけないで」と思って、腹が立つわけです。

「怒り」ですね。


「あなたって、〇〇ですよね」で生じる「怒り」


  • 「傷つけられているとき」

人は誰でも「理解して欲しい」という欲求を持っていますが、理解ではなく誤解された時、傷つきます。

本当は「元気ではない」にもかかわらず、「いつも元気ね」と言われると、「元気ではない自分」が無視され、否定されたと感じるからです。

  • 「権利が侵されているとき」


自分のことを他人に、間違って「決めつけられる」とき、怒りが生じます。

「勝手に決めるな」と思うのです。

決めるのは、自分の権利だからです。

  • 「欲求や望みが適切には満たされていないとき」


「自分の思い通りにいかないとき」、人は腹が立ちます。

欲求が満たされない、望みが叶えられないとき。

絶望感や無力感、挫折感などで傷つき腹が立ちます。

  • 「何かが間違っていると感じるとき」


「〇〇ですよね」と言われた内容が間違っている時、自尊心が傷つき、怒りが生じます。

腹が立って当たり前


このように「あなたって、〇〇ですよね」には、相手を怒らせる要素がすべて入っているのですね。

腹が立って、当たり前なのです。

ところで、②の「権利が侵されている」権利について考えてみましょう。


「こころの空間」を守る権利


まず、「からだの空間」について

「パーソナルスペース」という言葉はご存じでしょうか。

誰にでも、他人に必要以上に近づかれると不快に感じる空間(距離)があります。

他人に侵害されたくない、「自分の空間」があるのです。

「個人空間」、「パーソナルエリア」とも呼ばれます。

満員電車が不快なのは、このパーソナルスペースが侵害されているからですね。

この空間は、親密度によって変わってきます。

親しい人とは狭く、知らない人とは広いのが普通です。

家族とはからだが触れ合うほどの距離でも、知らない人とは距離を取りますよね。

「こころ」にも、パーソナルスペースがあります。

自分ひとりだけの「こころの空間」です。

こころの中にある「自分の部屋」と言ってもいいでしょう。

その「部屋」は、赤ちゃんの時からあって、親であろうと勝手に入ってはいけない、大切な空間です。

この部屋には、自分のしたいこと、好きなこと、大切なものなどが入っています。

そしてだれでも(赤ちゃんにも)、自分の部屋の中のものを守る権利があります。

小さい子どもの「こころの空間」は親に丸見えです。

しかし、成長に従って見えなくなっていきます。

子ども部屋を欲しがり、勝手に部屋に入ると猛烈に怒ったりします。

これが健康な子どもの成長なのですが、寂しく感じたり、子どもの空間に勝手に入って(侵入して)しまう親は少なくありません。

健康な子どもは、それを嫌い、不快に思います。

現実でも、子ども部屋にノックをしないで入ると、子どもは「侵入された」と感じますので、慎みましょう。 

夫婦でも、親子でも、きょうだいでも、相手の「こころの空間」は大切にしましょう。


「あなたって、〇〇ですよね」が相手を傷つけるとき


あなたには、相手のこころの空間に何があるのかは、決して分かりません。

にもかわらず、「あなたって、〇〇ですよね」と思うとき、相手のこころの敷地内に侵入して、のぞき込んでいることになります。

ところが、のぞき込んでも、決して見えませんので、想像するのです。

「あなたって、〇〇ですよね」と。

このように「決めつけてしまう」と、相手の本当の姿は見えなくなります。

こうして「分かってもらえない」相手は、傷つくのです。

相手に対して、

「こうしてほしい」と思うとき、

「こうするべきだ」と思うとき、

「なんで、こうしないの」と思うとき、

「こうしなさい」と命令するとき、

あなたが「相手に求めていること」と「相手がしたいこと」とは「違う」と思いましょう。

どこが、どのように違うのかも、あなたには分かりません。

特に気をつけたいのは、小さな子どもに対してです。

親は、「子どものことは分かっている」と思いがちですが、

人間が違うのですから、分かるはずがありません。

「決して分からない」という意識をもちましょう。

親にとって子どもは、「自分(親自身)ではない」という意味では「他人」なのです。

「分からない」から、知ろうとする。

そこに、コミュニケーションの一つの大切な意味がありますね。

相手を完璧にわかることは、決してないということ。

これが前提にあるからこそ、コミュニケーションが必要と言われるのだと思います。

子どもとのコミュニケーションは、大切ですね。

子どものことは、子ども自身に教えてもらいましょう。

それが子どもの「こころ」を大切にすることになります。

「あなたって、○○だね」という言葉も、「こころの空間」を大切にした上での言葉であれば、相手は傷つきません。

そして、

「こころの空間」を大切にされた人は、相手の「こころの空間」も大切にできるようになります。

対人関係では、「こころの空間」はとても大切なものです。

大切な人との良い関係を続けるためにも、壊れかかった関係を改善するためにも、「こころの空間」を少し意識してみましょう。

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