「あなたって〇〇ですよね」
こんなふうに言われてムカッとしたことがありますか?
「あなたは何も心配事なんてないでしょ」
「あなたって幸せそうね」
「あなたはいつも元気ね」
「あなたって、傷つきやすいよね」
「あなたって、すぐ泣くよね」
「あなた、けっこう、細かいよね」
「すぐ怒るよね」
いかがですか?
こういわれて「ムカッ」ときたこと、ありますか?
これが喧嘩の場面だと、強い非難の言葉になります。
「あなたって、自分のことしか考えないよね!!」
「あなたって、いつもいい加減なんだから!!」
「一度も時間に来たことないじゃない!」
「ムカッ」とくるときに思うこと
★「そんなことないのに、なんでそう思うの?」
★「私のことなんて何も知らないくせに」
★「勝手に決めないでほしい」
★「失礼ね」
★「分かってない。理解する気もないんだ」
★「誤解してる」
★「お前が決めるな」
たとえば「あなたはいつも元気ね」について考えてみましょう。
こう言われて、「そうなんですよ」と思う人は「ムカッ」ときませんね。
「ムカッ」とくる人の多くは、「本当は他人が思うほど元気じゃない」と思っている人です。
当たってないから、「決めつけないで」と思って、腹が立つわけです。
「怒り」ですね。
「あなたって、〇〇ですよね」で生じる「怒り」
- 「傷つけられているとき」
人は誰でも「理解して欲しい」という欲求を持っていますが、理解ではなく誤解された時、傷つきます。
本当は「元気ではない」にもかかわらず、「いつも元気ね」と言われると、「元気ではない自分」が無視され、否定されたと感じるからです。
- 「権利が侵されているとき」
自分のことを他人に、間違って「決めつけられる」とき、怒りが生じます。
「勝手に決めるな」と思うのです。
決めるのは、自分の権利だからです。
- 「欲求や望みが適切には満たされていないとき」
「自分の思い通りにいかないとき」、人は腹が立ちます。
欲求が満たされない、望みが叶えられないとき。
絶望感や無力感、挫折感などで傷つき腹が立ちます。
- 「何かが間違っていると感じるとき」
「〇〇ですよね」と言われた内容が間違っている時、自尊心が傷つき、怒りが生じます。
腹が立って当たり前
このように「あなたって、〇〇ですよね」には、相手を怒らせる要素がすべて入っているのですね。
腹が立って、当たり前なのです。
ところで、②の「権利が侵されている」の権利について考えてみましょう。
「こころの空間」を守る権利
まず、「からだの空間」について
「パーソナルスペース」という言葉はご存じでしょうか。
誰にでも、他人に必要以上に近づかれると不快に感じる空間(距離)があります。
他人に侵害されたくない、「自分の空間」があるのです。
「個人空間」、「パーソナルエリア」とも呼ばれます。
満員電車が不快なのは、このパーソナルスペースが侵害されているからですね。
この空間は、親密度によって変わってきます。
親しい人とは狭く、知らない人とは広いのが普通です。
家族とはからだが触れ合うほどの距離でも、知らない人とは距離を取りますよね。
「こころ」にも、パーソナルスペースがあります。
自分ひとりだけの「こころの空間」です。
こころの中にある「自分の部屋」と言ってもいいでしょう。
その「部屋」は、赤ちゃんの時からあって、親であろうと勝手に入ってはいけない、大切な空間です。
この部屋には、自分のしたいこと、好きなこと、大切なものなどが入っています。
そしてだれでも(赤ちゃんにも)、自分の部屋の中のものを守る権利があります。
小さい子どもの「こころの空間」は親に丸見えです。
しかし、成長に従って見えなくなっていきます。
子ども部屋を欲しがり、勝手に部屋に入ると猛烈に怒ったりします。
これが健康な子どもの成長なのですが、寂しく感じたり、子どもの空間に勝手に入って(侵入して)しまう親は少なくありません。
健康な子どもは、それを嫌い、不快に思います。
現実でも、子ども部屋にノックをしないで入ると、子どもは「侵入された」と感じますので、慎みましょう。
夫婦でも、親子でも、きょうだいでも、相手の「こころの空間」は大切にしましょう。
「あなたって、〇〇ですよね」が相手を傷つけるとき
あなたには、相手のこころの空間に何があるのかは、決して分かりません。
にもかわらず、「あなたって、〇〇ですよね」と思うとき、相手のこころの敷地内に侵入して、のぞき込んでいることになります。
ところが、のぞき込んでも、決して見えませんので、想像するのです。
「あなたって、〇〇ですよね」と。
このように「決めつけてしまう」と、相手の本当の姿は見えなくなります。
こうして「分かってもらえない」相手は、傷つくのです。
相手に対して、
「こうしてほしい」と思うとき、
「こうするべきだ」と思うとき、
「なんで、こうしないの」と思うとき、
「こうしなさい」と命令するとき、
あなたが「相手に求めていること」と「相手がしたいこと」とは「違う」と思いましょう。
どこが、どのように違うのかも、あなたには分かりません。
特に気をつけたいのは、小さな子どもに対してです。
親は、「子どものことは分かっている」と思いがちですが、
人間が違うのですから、分かるはずがありません。
「決して分からない」という意識をもちましょう。
親にとって子どもは、「自分(親自身)ではない」という意味では「他人」なのです。
「分からない」から、知ろうとする。
そこに、コミュニケーションの一つの大切な意味がありますね。
相手を完璧にわかることは、決してないということ。
これが前提にあるからこそ、コミュニケーションが必要と言われるのだと思います。
子どもとのコミュニケーションは、大切ですね。
子どものことは、子ども自身に教えてもらいましょう。
それが子どもの「こころ」を大切にすることになります。
「あなたって、○○だね」という言葉も、「こころの空間」を大切にした上での言葉であれば、相手は傷つきません。
そして、
「こころの空間」を大切にされた人は、相手の「こころの空間」も大切にできるようになります。
対人関係では、「こころの空間」はとても大切なものです。
大切な人との良い関係を続けるためにも、壊れかかった関係を改善するためにも、「こころの空間」を少し意識してみましょう。
取手心理相談室
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