(10)個人によって異なるストレス ⑤べき思考

べき思考とは

「~すべき」、「~でなければならない」という考え方です。

世界は、「自分の考えた通り」である「べき」なわけです。

「~べき」思考の例

●子どもに:遊んだら必ず自分で片付けするべき

      努力して勉強すべき

●主婦に:完璧に家事をすべき

●夫に:家族の中心となり、家族を守るべき

●他人に:他人には親切にすべき

●時間に:絶対に遅れるべきではない

●電車で:お年寄りには席を譲るべき

●仕事で:絶対にミスをしてはいけない

     仕事は全力ですべき

     上司は部下のことは理解しておくべき

まだまだ、たくさんの「べき」がありますね。

べき思考の利点

べき思考は、悪いばかりではありません。
次のような利点もあります。

●意志が強く、決めたらやり通す力をもっている。
●まじめで責任感が強い。
●周囲から頼りにされることが多い。

べき思考の害

べき思考には、利点もありますが、次のような害もあります。

① 自分に対する「~べき」が強い人の場合

自分のあら捜しをして、「自分はダメ」と考え、自信をなくす。

思うようにコトが進まなくてイライラする。

「~べき」の基準に合わないと、自己嫌悪、恥、罪悪感が生じる。

自分を追い詰め、自分を苦しめる。

生きづらくなる。

② 他人に対する「~べき」が強い人の場合

他人のあら捜しをして、相手を責める。

ちょっとしたミスを許す気になれない。

期待通りに相手が動かないことにイライラする。

「~べき」の基準に合わないと、怒り、欲求不満が生じ、相手を責めたり批判する。

対人関係が悪化したり、親子関係も、家族関係もこじれてくる。

生きづらくなる。

べき思考は、自分に向けても、他人に向けても、生きづらくなってしまいます。

たいていは、自分にも、他人にも向けますので、その生きづらさはひとしおです。

ここでは、①の「自分に向ける人の場合」を考えてみます。

なぜ、「べき思考」になったの?

たとえば次のような可能性が指摘されています。

●子どものとき親に「~すべき」と言われたのを、今は自分で自分に向けている。

●子どもの頃に「~しないと愛されない」、「~しないと認めてもらえない」と思ったことを、今も同じように思っている。

●自分がどうしらたいいか分からないので他人の言った「~べき」を、頭から信じている。

では、生きづらくなるほどの「~べき」の裏には何があるのでしょう?

愛されたい・認めてほしい

人間は誰でも、周りの人に「愛されたい」、「認めてほしい」と思っています。

「周りの人」とは、親、友達、先生などです。

特に子どもの場合、愛され、認めてもらえないと生きていけませんから必死です。

子どものころから、「愛されるために」、「認めてもらうために」頑張って生きてきた方は、多くの方が大人になっても、不安を抱え込んでいます。

「愛してもらえないのではないか」、「認めてもらえないのではないか」という不安です。

人間にとって、愛されないこと、認めてもらえないことほど辛いことはありません。

ですから、急に「~べき」をやめることは、とても難しいのです。

でも、
もし可能なら、「~したい」や「~したくない」という気持ちについて考えてみましょう。

「~べき」から、「~したい(~したくない)」

「~べき」は、頭が考えたことですので、「こころ」がついていけないと、辛くなります。

「~したい」や「~したくない」は、「こころ」が求めることですから、楽なのです。

ただ、「~べき」の気持ちが強いと、難しいかもしれません。

「難しい」と感じたとき、ちょっとだけでいいので、考えてみましょう。

あなたの「愛されたい気持ち」は、強そうですか?

ふだんから「感謝されたい気持ち(認めてほしい気持ち)」は、ありそうですか?

「強そう」と感じたら、「私は愛されたい、感謝されたい気持ちがたくさんあるんだね」と思ってあげましょう。

取手心理相談室  
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