「なんで、○○しないの?!」にひそむ無意識の気持ち
このように言ったことはありますか?
なんで、早く帰って来ないの?!
なんで、もっと頑張れないの?!
なんで、約束守れないの?!
なんで、連絡くれなかったの?! くれるって言ってたよね?!
なんで、できないの?! やる気あるの?!
なんで、わからないの?! 教えたよね?! 覚える気あるの?!
なんで、やらないの?! 約束したよね?!
「なんで、〇〇ないの?」と言いたい気持ち
そもそも「なんで、○○しないの」(「なんで、○○できないの」)と言いたくなるときって、どんなときでしょう?
そうです。
相手に腹を立てているときですね。
つまり、相手に対する「怒り」がありますね。
それで、相手を「責める」わけです。
では、なぜ「責める」のでしょう?
そう。
「期待が裏切られた」からですね。
期待を裏切られた傷つきと怒り
【例 1】
今日は日頃仲良くしているママ友たちとランチにいく予定です。
前から行きたいと思っていたお店ですから、楽しみでワクワクしています。
11時半に行けば予約しなくても大丈夫と聞き、11時に待合せました。
ところが、ひとりAさんが、11時半になっても来ません。
遅くとも12時にはお店に着かないと、席はありません。
「早く来ないかなあ」とだんだんイライラしてくるあなた。
今から行っても、もう、席はないかもしれない。
せっかく楽しみにしていたのにと、腹が立ってきます。
なんで、来ないんだろう。
こんなに楽しみにしていたのに、今日はあきらめなければいけないのか。
前から食べてみたかったランチなのに、Aさんひとりのために我慢させられた。
心のなかは悔しさと、悲しみと、絶望と、そして怒りでゴチャゴチャ。
やっと、そのAさんが来た時、爆発するのです。
「なんでもっと早く来れないの?! なんで連絡くらいできないの?!」
【例 2】
例1の「ママ友」を「家族」、「ランチに行く」を「子どもの誕生日会をする」、「Aさん」を「夫」にすると、日常の家族の風景に変ります。
「なんでもっと早く帰って来ないの?! 今日は誕生日だって言ったでしょ?! 早く帰って来るって約束したよね?! 待ってたのよ! 可愛そうに、寝ちゃったじゃないの!」
【例 3】
例1の「Aさん」を「子ども」、「ランチに行く」を「宿題をする」にしてみましょう。
「なんで、もっと早く帰って来て宿題しないの?! 今、何時だと思ってるの?! どうするつもりなの?! 勝手にしなさい!!」
からだが「戦闘モード」に入る
期待していたのに、期待通りにいかない。
期待が裏切られた時、期待をあきらめる時、その悔しさ、悲しみ、絶望はハンパじゃあ、ありません。
心臓はタタタッと打ち、息もハアハアしてきて、からだは「戦闘モード」に入ります。
あなたのからだの奥深くから、怒りが湧き出てきたのです。
【例1】の続き
もっと早く来てくれれば、予定通りにあのランチが食べられたのに!!
あなたのお陰で食べられなかったじゃないの!!
私がどんな気持ちで、楽しみにしていたか知らないくせに、よくもまあ、こんなに遅れて!!
最初から来る気がなかったんじゃないの?!
完全にキレていますね。
【例2】の続き
せっかくの誕生日なのに!
もっと早く帰って来れば、(子どもは)起きてたのに!!
帰ってくるのをいつもどんなに楽しみにしてるか考えたことあるの?!
子どものことも、私のことも、大事じゃないんでしょ?!
まるで自分が「さっきまで起きて待っていた子ども自身」であるかのように、訴えます。
完全に、自分を失っている状態です。
「期待していたことをあきらめさせられる」とき、人って、こんなに激しいんですね。
ところで、そんなに自分を見失ってキレてしまうほどの「期待」って、何なんでしょう?
それほどまでに「期待した」のは何故?
「ずっと食べてみたかったあのランチが、どうしても食べたい!」
この「期待」には、「これまでの人生であきらめたこと全部」がかかってきます。
「○○したい!」と強く思いながらも「あきらめざるを得なかった」たくさんの「思い」が、「こんどこそ成就させたい」と必死になるのです。
こうして「期待」は、「雪だるまのように大きく」なっていきます。
どんなにか今まで我慢してきたか・・・
もう我慢できない!
「今度こそ」という思いが、「あのランチを食べたい」という気持ちをとことん大きくします。
だから、裏切られたショックもハンパじゃないのです。
とても自分では扱えきれない大きさなのですね。
だから、キレてしまうのです。
「私の期待を裏切らないで!」という叫びの行き先
「なんでもっと早く来れないの?! なんで連絡くらいできないの?!」
この言葉は、「できなかったこと」を責めていますね。
よく考えてみると、「できなかったこと」を責めてみても、
「あきらめなければいけない」ことに変わりはありません。
「許しがたい気持ち」を相手にぶつけてるだけということになりますね。
「二度と私の期待を裏切らないで!」という悲痛な叫びなのですが。
しかし、です。
「なんで?!」と叫んだとたん、相手には2つの意味が同時に伝わります。
① 理由をたずねられた
② 責められ
①の場合の相手のこたえ
「電車が遅れて、ケータイも忘れちゃって」・・・「いいわけなんか聞きたくない!」
②の場合の相手のこたえ
「ごめんなさい、待たせちゃって」・・・・・・・「謝ればいいわけ?」
相手は①を言っても、②を言っても、許してもらえません。
つまり、相手が何と言おうとダメなのです。
そして、いつまでも怒り続けることになります?!
こうなるとパワハラまでは、すぐそこです。
実際に、「なんで、○○しないの?!」は、パワハラでよく使われる言葉でもあります。
「なぜできない?」「なぜ分からない?」など、
「指導」の名のもとに、部下を追い詰めてしまうことは少なくないのですね。
じゃあ、どうしたらいいの?
「なんで、もっと早く来れないの?!」の本当の気持ちは何でしたっけ?
そう。
「もっと早く来てほしかった」ですね。
「あのランチをどうしても食べたい」でしたね。
まずは、本当の気持ちを言う練習をしてみましょう。
カッとしてしまった後でもいいです。
「本当の気持ち」を探してみましょう。
「本当の気持ち」に気づいたら、それを相手に伝える練習をしてみましょう。
「それも難しい!!」という方は、カウンセリングの場で探してみる方法もあります。
逆に、言われた場合
「なんで、○○しないの?!」と言われた場合は、3つの道があります。
相手から「怒り」を向けられた場合の対応は、基本的に3つです。
① 怒りを伝える(方法はいろいろあります)
★ 「そのような言い方をされると困る」や「そのよう
に怒られるのは嫌だ」とはっきりと伝える。
★ もっと激しく怒りまくる。(逆切れですね)
② 謝ったら後はさっさと逃げて、もうお付き合いしない。(「逃げ」は、「守り」です)
③ じっと我慢する。
③の方は要注意です。
こころに負担がかかりますから、限界が来る前に①か②を試してみましょう。
取手心理相談室
電話: 080-5687-8508
メール: toride.shinrioffice@gmail.com
担当者プロフィール