(13) 個人によって異なるストレス ⑧断れない

なぜ「断る」のはストレスになる?

「断る」とき、

「せっかく誘ってくれたのに悪いな」とか、

「せっかく私に依頼してきたのに悪いな」と思う。

そして、

「断ること」は、「相手を拒否すること」と思っている。

だから、

「相手の期待にこたえないと」と思う。

このように、「断る」ことをめぐって、こころはいろいろなことを考え、

「断りたい気持ち」と「断れない気持ち」の間で激しく葛藤します。

これがストレスとなります。

この一方で、断ることがそれほどストレスにならない人もいます。

どこが違うのでしょう。

「断れない人」の傾向

●嫌われるのが怖い(断わると嫌われる)

 なぜなら、

   断ると相手が傷つくから

   断るのは拒否することなので、相手が怒ると思うから

   断ると関係が悪くなるから

   人が嫌がることを引き受ける人は、優しくて思いやりのある人だから

   断ることに罪悪感があるから

●いい人と思われたい(認められたい、褒められたい)

 なぜなら、

   断らない人は、優しくて思いやりがあると思うから

●引き受けると自分のためになると思っている

 なぜなら、

   やりたくないことをすることは、自分の経験になるから

●「人を助けたい」気持ちが強い

 なぜなら、

   人に喜んでほしいから

   人の役に立ちたいから

いかがでしょうか?

この中から今回は、

「嫌われるのが怖い」ことについて考えてみたいと思います。

「断ると嫌われる」と思うのはなぜ?

「断れない人」の中には、「断られた人の気持ち」を考えている人が少なくありません。

●断られると、きっと、不快な思いをするだろう
●断られると、きっと、腹が立つだろう
●断られると、きっと、傷つくだろう
●断られると、きっと、拒否されたと思って落ち込むだろう
●断られると、きっと、自分のことを「思いやりのない人」と思うだろう

こんなふうに考えると、断れなくなるのも当然ですね。

これらは、「断られた相手の立場」に立って考えたことです。

もし自分が断ったら、断られた相手は「きっと、こう思う」のです。

「相手の立場に立つ」とは?

まず、次のことを確認しましょう。

人はそれぞれ、考え方も、価値観も、好き嫌いも違います。

「相手は自分とは違う」のです。

これを確認した上で、

「相手の立場に立つ」ことについて考えてみましょう。

私たちは、「相手」が「本当はどう思っているか」は、絶対にわかりません。

なぜなら、確認したように、

「相手は自分とは違う」からです。

「相手」が「本当はどう思っているか」が分からないのに、

どうやったら「相手の立場」に立てるのでしょう?

ちょっと考えてみましょう。

「相手の嫌なことはしない」というときの「相手の嫌なこと」とは、

「自分だったら嫌なこと」なのではないでしょうか?

私たちは、「相手が嫌なこと」は分かりませんので、

「自分だったら嫌なこと」を相手に当てはめて考えます。

「自分だったら、嫌だから」、

「きっと、相手も嫌だろう」と想像するわけです。

すると先ほどの「断られた人の気持ち」とは、「自分の気持ち」ということになります。

「自分の気持ち」は、以下のようになります。

●断られると、私は、不快な思いをする
●断られると、私は、腹が立つ
●断られると、私は、傷つく
●断られると、私は、拒否されたと思って落ち込む
●断られると、私は、相手のことを「思いやりのない人」と思う

いかがですか?

このように思う人は、断わられるのがすごく嫌で、「断られたくない人」ですね。

「きっと、相手もそうだろう」と思うからです

そのために、「断われない」ということになります。

つまり、

「断れない人」は、「断られたくない人」なわけです。

「断れない人」と「断られたくない人」の違い

「断れない人」の特徴をまとめると、

断られると、拒否されたと思い、傷つき、不快になって、腹が立ち、「断るような思いやりのない人」は嫌いだと思う人、

ということになります。

逆に、「断れる人」は、

断られても傷つかない人が多いです。

断られても、拒否されたとは思わず、不快にもならず、腹も立たず、断った人を「思いやりのない人」とは思わない人です。

なぜなら、人それぞれ都合があることが分かっているからです。

そして、相手の気持ちや判断を尊重するからです。

「相手は自分とは違う」ことに気づきましょう

「己の欲せざるところ、人に施す勿れ」と孔子の言葉にあります。

私たちは小さいときから、

「自分がされて嫌なことは、他人にもしない」と言われてもきました。

でも、

「自分がされて嫌なこと」を、「相手も嫌だ」とは限りません。

「自分がしてほしいこと」を、「相手もしてほしい」とは限りません。

「自分がほしいもの」と、「相手がほしいもの」は違うからです。

そして、

「自分がされて嫌なこと」を、「されても嫌じゃない人がいる」という事実があります。

「嫌なことは嫌と言える人」、「断れる人」を信頼してくれる人も少なくありません。

だから、

思い切って、断ってみませんか?

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