(9)「夢」の生成 ①意識と無意識(1)

「夢」は意識と無意識の相互作用

「え?何のこと?」と思われるでしょうか?

「意識」は、あなたの五感がキャッチできることの全てです。

「無意識」は、それ以外、つまり、意識できない領域のことです。

もっと具体的に言うと、

「意識」は、「私」のことで、

「私がした」

「私感じた」

「私が思った」

「私が考えた」

と思っていることの全てです。

「私」が見たもの、「私」が聞こえたもの、「私」が感じたもの、「私」が思ったこと、「私」が考えたこと、などです。

この「意識」は、17世紀の哲学者デカルトの有名な命題から「意識されるように」なりました。

「意識」の発見

「我思う、ゆえに我あり」

ご存知の方もいらっしゃると思います。

デカルトは、世界にあるすべてのものを疑ってみました。

自分のことも「本当に存在するのか」と疑ったのです。

でも、そうやって疑っている自分がいるということは事実であり、

「疑っている私」の存在が、「私が存在する」ことの証明だと考えたのです。

これが、
「我思う、ゆえに我あり」です。

自分というものの存在や、意識というものの発見になりました。
(哲学では、「意識」とは言わず、「近代自我」と呼んでいます)

この言葉から近代哲学が始まります。

そして、近代科学もここが出発点になりました。

現代の私たちにとって、なくてはならない科学技術。

私たちは、その恩恵にどっぷり浸かっているのですが、

科学技術の発展を支えてきたのは、デカルトの思想なのですね。

近代科学とは、実験で客観的に確認できるもの、数字であらわせるものだけを扱うものです。

「見えないもの」には、しっかりと目をつぶらないと、近代科学は成立しないのです。

科学の発展は、

デカルトの思想で「意識できないもの(見えないもの)」を排除することで可能になりました。

「見えないもの」の排除

デカルト以前は、地球は平らで、空は丸い天井だったし、月にウサギがいても良かったのです。

干ばつや洪水は神の怒りであり、病気は悪霊のせいですから追い出せば治ります。

流れ星が流れている間に願い事をすると願いは叶います。

森には精霊がいて、小人も魔女もいて、私たちを脅かしたり、助けてくれたりしました。

魔術、呪術、悪霊、憑依、神託、ざしきわらし、もののけ、魔物

これらは、科学では証明できません。

こんなものは迷信だから、もう信じられません。

こうして「見えないもの」は、「事実ではない」といわれ、生活から排除されていきました。

ところがこんなとき、無意識が「発見」されます。

「無意識」の発見

無意識は、1900年ころ、精神科医で精神分析の創始者のフロイトによって発見されました。

「意識以外の領域がある」と主張したのです。

フロイトは言いました。

人間は、意識できることだけで生活しているわけではない。

ほら、

思い出そうとしても、意識に上ってこないものがある。

聞き間違いや、言い間違い、書き間違いもあるじゃないか。

「そんなこと言うつもりじゃなかった、間違えた」というじゃないか。

あなたの本心は、その間違えた方である。

本心が出てしまうのは、自分ではコントロールできないのだ。

フロイトの考えは、世界中に衝撃を与えました。

理性でコントロールできないものがあるなんて!と。

「意識できない領域がある」

このとき、排除されていた「見えないもの」が復活しました。

「無意識」という名前がついての復活です。

無意識の中では、森に精霊がいたり、月にウサギがいたり、天空には丸い天井があったりします。

四葉のクローバーは幸運と結びついていたり、流れ星は願い事をかなえてくれるのです。

これらは「夢」と深い関係をもっています。

現代の人も、空が丸い天井になっている夢を見ることがあるくらいです。

続きは次回

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