睡眠と記憶
徹夜で勉強したことは、たいていはすぐに忘れてしまいます。
寝不足だと、記憶力が落ちますね。
睡眠時間が記憶に影響することくらい、誰でも知っていることです。
でも、記憶力と関係するのは、「睡眠時間」ではありません。
関係するのは、「夢を見ている時間」なのです。
「夢」を見ているときの睡眠は、「レム睡眠」と呼ばれています。
「レム睡眠」の発見
1953年に「レム睡眠」は発見されました。
私たちの脳は、眠っているときにも日中と同じように活動している時間帯があります。
そのときの睡眠がレム睡眠です。
レム睡眠の「レム」は、「眼球急速運動Rapid eye movement」です。
つまりレム睡眠の時は、脳波だけではなく、眼球も活発に動いているわけです。
そして、
レム睡眠の時は「夢を見ている」のです。
「記憶」と「夢」の実験の始まり
1991年のアメリカの大学の研究室でのことです。
ある研究者が、ラット(実験用の小さいネズミ)を迷路において、「餌までの場所をどのように記憶するのか」という実験をしていました。
実験を終えたあと、ラットは眠りました。
それなのに、ラットの脳波が活性化したのです。
研究者は、驚きました。
ラットは寝ているのに、脳は、迷路を走り回っていたときと同じ活動をしているのです。
これがきっかけとなって、睡眠と記憶に関する研究が始まりました。
「知識の獲得」と「夢」の実験
同じ頃、別の大学では「新しく学んだこと」と「夢」の関係を調べました。
新しいゲームのやり方を学んだ後、レム睡眠の時に起こして、そのとき見ていた夢を報告するという実験です。
実験の結果、
夢の中で「ゲーム」の練習をしていることが分かったのです。
ちなみに、この実験には健忘症の人も参加しました。
健忘症の人も、夢の中でゲームの練習をしていました。
もちろん健忘症の人は、ゲームのルールを記憶することはできません。
でも、面白いことに、
だんだんゲームが上手になっていくのです。
「夢の中で練習しているからではないか」と考えられました。
「試験の結果」と「睡眠」の調査
2000年にはカナダで、フランス語の試験結果と睡眠サイクルの調査が行われました。
この調査で分かったのは、
レム睡眠の割合が多い学生ほど成績が良かったことです。
つまり、「夢」を見る時間が長ければ長いほど、フランス語が早く上達したことが分かりました。
似たような実験はその後も続けられ、「夢の量」と「試験の成績」に関係があることが裏付けられました。
現在は、語学学習も技術の習得も、
その夢を見ることと、夢の量に関連があることは間違いないと考えられています。
たった一晩、睡眠が足りなかっただけで、新しい技術を習得したり、新しい情報を吸収したりする能力が落ちることも分かっています。
記憶力にもっとも重要なのは、「夢を見ること」のようです。
私たちは自分にとって重要なことは「夢」の中で繰り返し見て、心に刻み込んでいるのです。
取手心理相談室
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参考文献:『夢の正体 夜の夢を科学する』 著者アリス・ロブ 川添節子訳 早川書房