(21) 個人によって異なるストレス ⑯劣等感

あなたは今まで、どんなことに劣等感(劣等意識)を持ってきましたか?
勉強、学歴、スポーツ、仕事、家族、容姿、恋愛など、人によっていろいろですね。

劣等感を持ったことのない人はいないと思います。

みんなが、劣等感を抱えて生きているといってもいいくらいです。
人より劣っている部分は、だれにもありますから。

すると、劣等感をもつことは自然のことと考えられます。

でも、「劣等感」にあまり良いイメージはありません。
なぜでしょう。

今回は、
劣等感について少し考えてみたいと思います。

まず、劣等感とは何のことなのかを押さえておきましょう。

劣等感とは

劣等感とは、
「自分は他者よりも劣っている」という気持ちのことです。

ここで、「自分は」というところがポイントになります。
現実に劣っているかどうかとは関係ありません。

「劣っている」と「自分が」感じているのが劣等感です。
「誰かと比較」した結果として生じたものです。

劣等感を持つこと自体には、「良い」も「悪い」もありません。

繰り返しますが、劣等感を持つのは自然のことだからです。

普通にある劣等感なのですが、
劣等感を利用して、成長のバネにする人もいれば、
劣等感が原因で、強いストレスを感じたり、生きづらくなる人もいます。

劣等感をバネに成長する場合と、ストレスの原因になる場合とでは、何が違うのでしょう?

劣等感の2つの側面

成長の原動力となる場合

「成功者」と言われる人たちは、その原点に劣等感があることが少なくありません。

たとえば、
体が弱いからと始めたスポーツで、一流のアスリートになった人はたくさんいますね。

劣等感をエネルギーに変えたわけです。

このような場合は、
自分自身に満足していない部分を劣等感と感じています。

「変わりたい」「成長したい」と思うから、劣等感になったとも言えます。

こういうときの劣等感は、
目指す自分に近づくための努力の原動力になりえるわけです。

ストレスの原因となる場合

成績や学歴、昇進などで人と差をつけられると、深く落ち込んでしまうことがあります。
自分に自信がなくなり、それまでの関係を続けられなくなることもあります。

劣等感のために人間関係がうまくいかなくなってしまうのです。

あるいは、
一つのことに劣っていると感じるだけではなく、自分自身を否定してしまうことがあります。

劣っている部分が自分の一部にすぎないのに、「どうせダメな人間」と、自分の全てが劣っているかのように感じてしまうのです。

自分の存在まで否定するようになると、生きていくのは辛くなります。

この場合、
自分の長所にまったく気づかなくなっています。

他人の長所を見つけるのは上手なのですが、自分に関しては短所しか見えないのです。

では、
どうして自分の長所が見えなくなってしまったのでしょう?

自分の長所がわからないのはなぜ?

自分の長所を見ることが難しい要因として、
次のことがよく言われています。

●親から否定されて育った
●きょうだいや親戚や、友だちと比較されて育った

子どもにとって親は絶対的な存在です。
子どもは、親をモデルにして成長します。

その親から否定されてしまうと、子どもは「自分はダメな人間」と思い込んでしまうのです。

また、
●誰かと比較されて、「あなたはどうしてできないの?」などと言われたり、
●頑張って良い成績をとっても、「一番じゃないのね」と認めてもらえなかったり、
●ほめられることが少なかったり、
●たとえほめられても、誰かとの比較だったりすると、
同じように、「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまうのです。

そして
常に誰かと比較することが身についてしまうのです。

その結果、
学生時代では受験戦争、
社会に出てからは営業成績や出世をめぐる競争が
大きなストレスとなってしまいます。

どんなに頑張っても、否定され、比較され、認めてもらえないと思い込んでいますので、

劣等感をバネに成長することも困難で、
実力を発揮できなくなってしまうのです。

非常に生きづらくなります。

こうなってしまったら、どうしたらよいのでしょう?

劣等感への対処法

「自分の一部」である劣等な部分は、自分そのものではないと理解しましょう。

劣等な部分は、「“自分の一部分”にすぎない」のです。

繰り返しますが、
「劣っている部分」は、単なる「一部分」なのであって、自分自身ではありません。

「劣っている部分」イコール「自分」ではありません。
そこを頭では分かっていても、きちんと分けられないのが辛いところです。

自分ひとりの力だけでは、なかなか抜け出すことは難しいことがあります。

そのようなときは、カウンセリングを利用しましょう。

おまけ:劣等感について、ちょっと耳の痛い話

ストレスになるほどの強い劣等感のある場合、信じがたいかもしれませんが、強い優越感が潜んでいることが多いのです。

無意識レベルの話ですから、気づくのは困難です。

強い優越感の裏返しとして、自分を全否定するような劣等感が存在します。

その優越感に気づくことができると、バランスのとれた劣等感になるはずです。

「自分は何でもできるはず、だれにも負けないはず、だれよりも優れているはず」という気持ちは、小さな子どもなら全員が持っている心です。

大人になっても、それをまだ抱えたままの人は少なくありません。

でも、現実の自分は「普通の人間」なのです。
劣等感も優越感も、両方持っているのです。

あまりに劣等感が強いと、裏側に強い優越感が発展していきます。
あまりに強い優越感を持っていると、裏側で強い劣等感が大きくなっていきます。

何事も、裏と表があります。
強い劣等感と、強い優越感は、セットなのです。

取手心理相談室  
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