(12) 鏡の夢

鏡を見る

鏡を見たことのない人はいません。

たいていの人は、一日に一回は鏡をみるでしょう。

鏡は、自分の姿を確かめるための大切な道具です。

鏡に映るもの

人間の赤ちゃんは、2歳前後になると「鏡に映っているのは自分」であることに気づきます。

これが、自分というものを認識する大事な最初の一歩です。

でも、鏡に映るのは自分だけではありません。

自分を取り囲む環境も、奥行きをもって鏡に映りこんでいます。

まるで、鏡のこちら側と違う世界が、鏡の向こう側にあるかのようです。

「映る」というと、
ナルシストという言葉の起源になったギリシャ神話に出て来る美少年、ナルキッソスが有名です。

ナルキッソスは、水面に映った姿が自分とは気づかず、恋焦がれてついに死んでしまいました。

また鏡には「霊力がある」という考え方は、世界中にあります。

日本では、鏡は霊界と人間界の境にあると信じられ、布がかけられていました。

おばあちゃんの姿見に布がかけられていたのを覚えている方もいるのではないでしょうか。

「鏡は真実の姿を映し出す」とも信じられていました。

『白雪姫』に出てくる魔法の鏡も「真実しか言わない鏡」です。

自分では決して見ることのできない「自分の姿」。
鏡を見ると、それが見えるのです。

よく考えてみると、不思議ですね。

「夢」の中の鏡

現実の鏡には、実際に目で見えるものが映ります。

鏡を通して自分自身を見て、これが自分であると認識します。

それに対して「夢」の中の鏡には、
心の目で見たものが映し出される可能性があります。

自分自身では気づいていない「自分」です。

私たちは、「自分のことはよく知っている」と思っています。

それは本当でしょうか?

他人のことは客観的に見えても、自分自身を客観的に見ることは難しくないですか?

「自分のことはよく知っている」と言う人ほど、自分のことを知らないことが多いのです。

しかし、「心の目」は知っています。

「夢」の中で鏡を見たとき、
「自分の真実の姿」に気づけるのかもしれません。
他人から見た「自分の姿」を見るのかもしれません。
ナルキッソスのように、自分の美しさに酔いしれているのかもしれません。
もしかすると鏡の向こう側へ、自分を探す旅に出るのかもしれません。

鏡の意味することが何であっても、

「自分とは何か」の手がかりになるはずです。

だって2歳のころ、鏡に映っているのは「私」であることに気づいた衝撃の経験があるのです。

「客観的に自分の姿を見る目」は、そのときから、心の中に存在しています。

「夢」の鏡は、長らくご無沙汰していたその「目」との再会でもあります。

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